特定技能人材の「転職リスク」――採用後の本当の課題
特定技能制度は、技能実習と異なり外国人材の転職が認められている点が大きな特徴です。企業にとっては「採用して終わり」ではなく、採用後の定着支援や職場環境の整備がますます重要になっています。ここでは、事実データに基づき、特定技能人材の転職リスクとその背景を解説します。
データで見る離職・転職の現状
自己都合離職率は16.1%
2022年11月までの累計データによれば、特定技能外国人材の自己都合による離職率は16.1%に達しています。これは、6人に1人が自らの意思で職場を離れている計算です。
転職経験者は全体の約5%
離職後、別の会社に特定技能として転職した人の割合は30.3%。つまり、在留者全体の約5%が転職を経験しています。技能実習制度と比べて転職の自由度が高いことが、こうした動きを後押ししています。
分野別では宿泊業の離職率が突出
分野別に見ると、「宿泊」分野の離職率は32.8%と特に高くなっています。これは、他分野と比べて職場環境や待遇面でのミスマッチが起きやすいことが一因と考えられます。
都市部への流出が加速
支援機関や現場の声によると、北海道から東京や大阪など、より賃金が高い都市部へ人材が流出する傾向が顕著です。地方企業で採用した人材が、より良い条件を求めて都市部の企業へ転職するケースが増えています。
転職リスクを軽減するためには?
職場環境・支援体制の充実が不可欠
特定技能人材の定着には、給与水準だけでなく、生活支援や相談体制、日本語学習の機会、職場でのコミュニケーションなど、総合的なサポートが不可欠です。
法律で義務付けられた支援計画の実施はもちろん、日常的な声かけやキャリアパスの提示、地域社会との交流促進など、きめ細かな配慮が離職防止につながります。
専門家の活用も選択肢
定着支援や労務管理に不安がある場合は、登録支援機関や専門家のサポートを活用することで、トラブルや早期離職のリスクを大幅に減らすことができます。
まとめ
特定技能人材の転職リスクは、制度上避けられない現実です。しかし、企業側の受け入れ体制や支援の質によって、定着率を大きく高めることが可能です。採用後の「人材流出」を防ぐためにも、今一度、自社の支援体制や職場環境を見直すことが重要です。
出入国在留管理庁「特定技能制度に関する統計・報告書」
厚生労働省「特定技能外国人の転職・離職状況」